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省力化投資補助金と他の設備投資支援制度との使い分け方

ものづくり補助金 中小企業省力化投資補助金

はじめに

中小企業の設備投資を支援する補助金制度は多岐にわたり、それぞれ異なる目的と特徴を持っている。
特に2025年から本格的に運用が開始された「省力化投資補助金(一般型)」は、従来のものづくり補助金やIT導入補助金とは明確に異なる目的と仕組みを持つ制度である。

本記事では、これらの補助金制度の違いを明確にし、事業者が最適な制度を選択するためのポイントを解説する。

主要な設備投資支援制度の概要

1. 省力化投資補助金(一般型)

省力化投資補助金(一般型)は、2025年から新たに開始される省力化投資補助金の申請枠で、人手不足に悩む中小企業や小規模事業者を支援することを目的としている。
業務プロセスの自動化・高度化やロボット生産プロセスの改善、デジタルトランスフォーメーション(DX)等、中小企業等の個別の現場の設備や事業内容等に合わせた設備導入・システム構築等の多様な省力化投資を促進する事業である。

主な特徴

  • 目的: 既存事業の省力化・人手不足解消
  • 補助上限額: 最大1億円(従業員数により異なる)
  • 補助率: 1/2(ほか条件により2/3)
  • 補助事業実施期間: 最長18か月
  • 収益納付: なし

2. ものづくり補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業等が行う、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等の取組を支援するものである。

主な特徴

  • 目的: 革新的な新製品・新サービス開発
  • 補助上限額: 最大4,000万円(従業員数により異なる)
  • 補助率: 1/2(ほか条件により2/3)
  • 補助事業実施期間: 通常10か月
  • 収益納付: 2025年より収益納付は求めない

3. IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や個人事業主がITツールを導入費用の一部を補助する制度で、労働生産性の向上や業務の効率化、DX化の推進を目的としている。

主な特徴

  • 目的: ITツール導入による業務効率化・DX化
  • 補助上限額: 最大450万円(申請枠により異なる)
  • 補助率: 1/2~4/5(枠により異なる)
  • 対象: ITツール(ソフトウェア、クラウドサービス等)
  • 申請回数: 年複数回

制度間の違いと使い分けポイント

1. 目的による使い分け

省力化投資補助金(一般型)が最適なケース

  • 人手不足の解消が最優先課題
  • 既存事業の効率化・自動化を図りたい
  • ロボットやIoT機器による省力化を検討
  • 基本的には「既存事業の省力化」のための投資

ものづくり補助金が最適なケース

  • 新製品・新サービスの開発を計画
  • 革新的な技術導入による差別化を図りたい
  • 海外展開を視野に入れた設備投資
  • 革新的なサービス開発や試作品の開発を目指す

IT導入補助金が最適なケース

  • ソフトウェアやクラウドサービスの導入
  • 業務プロセスのデジタル化が主目的
  • 比較的小規模なIT投資
  • インボイス制度対応が必要

2. 投資規模による使い分け

制度 最大補助額 適用場面
省力化投資補助金 1億円 大規模省力化投資
ものづくり補助金 4,000万円 中〜大規模設備投資
IT導入補助金 450万円 小〜中規模IT投資

3. 申請の複雑さと準備期間

申請が比較的簡単

  • IT導入補助金: 事前登録されたITツールから選択
  • 省力化投資補助金(カタログ型): 小規模企業や個人事業者も申請しやすい補助金

申請に時間と労力が必要

  • ものづくり補助金: 文量にしてA4およそ10枚程度の事業計画書を作成し、導入設備の概要、業務プロセスの改善方法、事業効果などを根拠となる資料を使って記載
  • 省力化投資補助金(一般型): 詳細な事業計画が必要

最適な制度選択のフローチャート(目安)

ステップ1: 投資目的の明確化

  1. 人手不足解消が主目的 → 省力化投資補助金を検討
  2. 新製品・新サービス開発 → ものづくり補助金を検討
  3. ITツール導入による効率化 → IT導入補助金を検討

ステップ2: 投資対象の確認

  1. 機械装置・ロボット等のハードウェア → 省力化投資補助金orものづくり補助金
  2. ソフトウェア・クラウドサービス → IT導入補助金
  3. システム統合・複合的な投資 → 省力化投資補助金(一般型)

ステップ3: 投資規模の評価

  1. 1,000万円以上の大規模投資 → 省力化投資補助金orものづくり補助金
  2. 500万円以下の小規模投資 → IT導入補助金or小規模事業者持続化補助金
  3. 中規模投資 → 目的に応じて選択

ステップ4: 準備期間の考慮

  1. 短期間での導入が必要 → 省力化投資補助金(カタログ型)は「採択=交付決定」となるので、事業を迅速に実施できる
  2. 計画策定に時間をかけられる → ものづくり補助金や省力化投資補助金(一般型)

業種別おすすめ補助制度

製造業

  • 省力化投資補助金: 生産ライン自動化、ロボット導入
  • ものづくり補助金: 新製品開発、革新的生産技術導入
  • IT導入補助金: 生産管理システム、品質管理ソフト

サービス業

  • 省力化投資補助金: 受付自動化、配送ロボット
  • IT導入補助金: 予約管理システム、会計ソフト
  • 小規模事業者持続化補助金: 店舗改装、販促ツール

建設業

  • 省力化投資補助金: 建設業界で行われている点検や測量を自動化するロボット
  • ものづくり補助金: 新工法開発、特殊機械導入
  • IT導入補助金: 工事管理システム、CADソフト

2025年度の制度変更点と注意事項

省力化投資補助金(一般型)の新設

2025年からは、「カタログ注文型」に加えて、個別の現場や事業内容に合った製品を自由に選べる「一般型」が新たに追加された。これにより、より柔軟な省力化投資が可能となった。

ものづくり補助金の変更

「省力化(オーダーメイド枠)」が廃止されるとともに、「製品・サービス高付加価値化枠」の2類型が統合された。中小企業の設備投資を支援する中小企業省力化投資補助金に、オーダーメイド形式の機器も補助対象となる「一般型」が新設されたことを受け、ものづくり補助金の「省力化(オーダーメイド枠)」が廃止された。

IT導入補助金の拡充

2025年では新たに「導入関連費(保守サポートやマニュアル作成等の費用に加え、IT活用の定着を促す導入後の”活用支援”も対象化)」が追加されている。また、最低賃金近傍の事業者の補助率の変更(通常枠)が実施された。

実践的な活用事例

事例1: 製造業A社(従業員50名)

課題: 人手不足による生産能力低下と新製品開発の必要性

解決策:

  1. 第1段階: 省力化投資補助金(一般型)で生産ライン自動化(8,000万円)
  2. 第2段階: ものづくり補助金で新製品開発用設備導入(2,000万円)

結果: 生産性30%向上、新製品3品目の市場投入

事例2: サービス業B社(従業員15名)

課題: 事務作業の効率化とデジタル化の推進

解決策:

  1. IT導入補助金: 顧客管理システム、会計ソフト導入(200万円)
  2. 省力化投資補助金(カタログ型): 受付自動化システム(500万円)

結果: 事務作業時間50%削減、顧客満足度向上

まとめ

設備投資支援制度の選択は、事業者の課題、投資目的、規模、タイミングを総合的に考慮して行う必要がある。

選択の基本原則:

  1. 目的の明確化: 省力化 vs 新規開発 vs IT化
  2. 投資対象の特定: ハードウェア vs ソフトウェア vs 複合
  3. 規模の適正化: 補助上限額と自己負担額のバランス
  4. タイミングの最適化: 併用制限と事業スケジュールの調整
  5. 申請負荷の評価: 計画書作成工数と期待効果の比較

2025年は設備投資支援制度が大幅に拡充された。各制度の特徴を正確に理解し、自社の状況に最適な制度を選択することで、効果的な設備投資を実現できる。
また、複数制度の戦略的活用により、段階的な事業強化も可能である。

制度選択に迷った場合は、認定支援機関や専門コンサルタントへの相談も有効な手段である。
適切な制度選択により、中小企業の持続的成長と競争力強化を実現していただきたい。

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