中小企業省力化投資補助金(一般型)の特徴とメリット
はじめに
令和7年に新設された「中小企業省力化投資補助金(一般型)」は、個別の現場に合わせた設備導入やシステム構築を強力に支援する制度である。
本制度は人手不足に悩む中小企業の経営者にとって朗報である。
本記事では、この補助金の特徴とメリットを詳しく解説する。
中小企業省力化投資補助金(一般型)とは
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために創設された補助金制度である。
人手不足に悩む中小企業等が、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した設備を導入するための経費の一部を補助することで、省力化投資を促進する。これにより、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としている。
一般型の主な特徴
1. オーダーメイド性のある設備導入が可能
従来のカタログ注文型とは異なり、一般型では業務プロセスの自動化・高度化やロボット生産プロセスの改善、デジタルトランスフォーメーション(DX)等、中小企業等の個別の現場や事業内容等に合わせた設備導入・システム構築等の多様な省力化投資を支援する。カタログに登録されていない設備やオーダーメイド(セミオーダーメイド)の設備・システム等の導入に活用できる点が最大の特徴である。
2. 高額な補助上限額
一般型の補助上限額は従業員数に応じて設定されており、最大1億円と非常に大きい。具体的には下記のとおりである:
- 従業員5名以下:750万円(大幅賃上げ特例適用時は1,000万円)
- 従業員6~20名:1,500万円(大幅賃上げ特例適用時は2,000万円)
- 従業員21~50名:3,000万円(大幅賃上げ特例適用時は4,000万円)
- 従業員51~100名:5,000万円(大幅賃上げ特例適用時は6,500万円)
- 従業員101名以上:8,000万円(大幅賃上げ特例適用時は1億円)
3. 有利な補助率
補助率については、事業者区分と補助金額に応じて以下のように定められている:
- 中小企業:1/2(補助金額1,500万円までの部分)
- 小規模・再生事業者:2/3(補助金額1,500万円までの部分)
- すべての事業者:1/3(補助金額1,500万円を超える部分)
さらに、最低賃金引き上げに取り組む中小企業に係る補助率引き上げもある。
4. 長い実施期間
補助事業の実施期間は、交付決定から最大18カ月である。これにより、生産・業務プロセスの大幅な改善をともなう設備導入にも余裕をもって取り組むことができる。
5. 収益納付義務なし
補助金等の中には、補助事業の成果によって一定の利益が出た場合、その一部を返納する「収益納付」の義務が生じるものがあるが、中小企業省力化投資補助金(一般型)は収益納付を求めない。
カタログ注文型との違い
中小企業省力化投資補助金には「一般型」と「カタログ注文型」の2つの枠組みがあるが、それぞれに特徴がある:
項目 | 一般型 | カタログ注文型 |
---|---|---|
補助対象 | 現場にあわせて独自の設備やシステムを選定・導入可能 | カタログに登録されている製品のみ |
補助上限額 | 最大1億円(従業員数による) | 最大1,500万円(従業員数による) |
公募方法 | 公募回制(年3~4回程度) | 随時公募(いつでも申請可能) |
申請書類 | 詳細な事業計画等が必要 | 比較的簡便 |
交付決定 | 3カ月程度の審査期間 | 最短1カ月で交付決定 |
ものづくり補助金との違い
ものづくり補助金の目的が「革新的な新製品・サービスの開発等」であるのに対して、中小企業省力化投資補助金(一般型)は「生産・業務プロセス等の効率化(省力化)」が目的である。
一般型活用のメリット
1. 自社に最適化された設備導入が可能
カタログに登録されていない設備や、自社の業務に合わせてカスタマイズした設備を導入できるため、より効果的な省力化が実現できる。
2. 大規模な設備投資に対応
最大1億円という高額な補助上限額により、大規模な設備投資も実施しやすくなる。
3. 長期的な取り組みが可能
実施期間が最大18カ月と長いため、計画的な設備導入や段階的なシステム構築が可能である。
4. 収益を気にせず事業に集中できる
収益納付義務がないため、補助事業による成果を企業の成長のために活用することができる。
まとめ
中小企業省力化投資補助金(一般型)は、人手不足に悩む中小企業が、自社の業務に最適な省力化設備を導入するための強力な支援策である。カタログにない省力化設備や、生産・業務プロセスに最適化されたオーダーメイド設備を導入したい場合、大規模な設備投資を計画している場合は、この「一般型」を積極的に活用すべきである。
企業の成長戦略として、省力化投資による生産性向上と賃上げを目指す中小企業にとって、この補助金は大きなチャンスとなる。最新の公募情報を確認しながら、計画的な申請準備を進めることをお勧めする。