【徹底解説】省力化投資補助金(一般型)第5回公募の変更点まとめ|第4回との違いを詳しく比較

2025年12月、中小企業省力化投資補助金(一般型)の第5回公募要領が公開された。
第4回からいくつかの重要な変更が加えられており、申請を検討している事業者は内容を十分に理解しておく必要がある。本記事では、第4回と第5回の主な変更点を詳しく解説する。
1. 賃金要件が大幅に変更|最も重要なポイント
第5回で最も大きく変わったのが賃金に関する要件である。
第4回の賃金要件
第4回では、以下のいずれか一方を達成すればよいとされていた。
- 「給与支給総額」の年平均成長率+2.0%以上
- 「1人当たり給与支給総額」の年平均成長率が、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上
第5回の賃金要件
第5回では、要件が一本化された。
- 「1人当たり給与支給総額」の年平均成長率3.5%以上
この3.5%という数値は、日本銀行が定める「物価安定の目標」2%に1.5%を加えた値として設定されている。給与支給総額の要件は廃止となり、より明確でシンプルな基準に変更された。
2. 補助率が簡素化
第4回の補助率
第4回では、補助金額によって補助率が異なっていた。
| 補助対象者 | 1,500万円まで | 1,500万円超 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 1/2 | 1/3 |
| 小規模企業者等 | 2/3 | 1/3 |
第5回の補助率
第5回では、金額による区分が廃止され、シンプルな構造に変更された。
| 補助対象者 | 補助率 |
|---|---|
| 中小企業 | 1/2 |
| 小規模企業者・再生事業者 | 2/3 |
高額の設備投資を行う場合、第5回の方が有利になるケースが多いと考えられる。
3. 大幅賃上げ特例の要件変更
補助上限額の引き上げを受けるための大幅賃上げ特例についても、基本要件の変更に伴い調整された。
| 項目 | 第4回 | 第5回 |
|---|---|---|
| 要件 | 給与支給総額+6.0%以上 | 1人当たり給与支給総額+6.0%以上 |
| 内訳 | 基本+2.0%+追加+4.0% | 基本+3.5%+追加+2.5% |
4. 従業員0名の事業者は申請不可に
第5回では、以下の事業者が明確に申請不可と定められた。
- 従業員が0名の事業者
- 1人当たり給与支給総額の対象となる従業員が0名の事業者
第4回では明確な記載がなかったが、第5回で要件として明文化された。役員のみで従業員がいない法人や、対象となる従業員がいない事業者は申請できないため注意が必要である。
5. 米国追加関税措置への対応|第5回の新設項目
第5回では、米国の追加関税措置により影響を受ける事業者への配慮が盛り込まれた。
主な内容
- 専用の指定様式:関税影響を受けている申請者向けの事業計画書様式が新設
- 審査での考慮:関税影響への対策として大きな効果が期待できる場合は審査で考慮
- サプライチェーンへの波及効果:他社の省力化への波及効果も評価対象
- 計画重複の例外:同一サプライチェーン内の複数企業による類似計画の申請を許容
関税措置の影響を受けている事業者は、専用様式を使用して申請することで、審査において有利に働く可能性がある。
6. 口頭審査が厳格化
口頭審査についても変更が加えられている。
| 項目 | 第4回 | 第5回 |
|---|---|---|
| 所要時間 | 15分程度 | 30分程度 |
| 同席者 | 申請事業者1名のみ | 役員または申請担当者1名の同席可 |
| 通訳 | 記載なし | 通訳者1名の同席可 |
審査時間が倍になったことで、より詳細な事業計画の説明が求められることが予想される。一方で、担当者の同席が認められたことで、技術的な質問にも対応しやすくなった。
7. 効果報告のタイミング変更
補助事業完了後の効果報告についても変更がある。
第4回
補助金交付を受けた会計年度終了後5年間、毎会計年度終了後60日以内に報告
第5回
事業計画期間1年目終了後の最初の4月から5年間、毎年事務局が定める期限までに報告
報告のタイミングが「会計年度終了後60日以内」から「事務局が定める期限まで」に変更され、より柔軟な運用になる可能性がある。
8. 補助対象外となる事業・経費の追加
第5回では、補助対象外となる事業や経費が追加・明確化された。
補助対象外事業(第5回で追加)
- 将来的な対外向け販売を前提とする設備・システム等の開発を含む事業
- 事業計画書に記載された経費の大半が補助対象外経費である事業
補助対象外経費(第5回で明確化)
- 自社商品(製品、システム、サービス等)の製作費、原材料費
- 有償レンタルにて他社に貸し出す機材等の購入費
- 不動産(土地、建物、構築物)の取得費用(簡易建物も対象外と明記)
自社で販売する製品やシステムの開発費用は対象外となるため、申請内容を十分に確認する必要がある。
9. システム構築費の保守・メンテナンス要件拡大
第4回
外部SIerを活用する場合に、3〜5年の保守・メンテナンス契約が必要
第5回
システム構築費を計上する場合は、発注先事業者との保守・メンテナンス契約が必要
対象がSIerに限定されず、システム構築費を計上するすべてのケースに拡大された。
10. 加点項目の変更
廃止された加点項目
第4回にあった「賃上げ加点」(給与支給総額+4.0%以上+事業場内最低賃金+40円以上を目標とする事業者への加点)が第5回では廃止された。
継続している加点項目
- 事業承継またはM&Aを実施した事業者
- 事業継続力強化計画の認定取得
- 成長加速マッチングサービスへの登録
- 地域別最低賃金引き上げ
- 事業場内最低賃金引き上げ
- えるぼし認定
- くるみん認定
11. 審査項目にサイバーセキュリティ対策が追加
第5回の計画面の審査項目に、「サイバーセキュリティ対策の状況」が追加された。補助事業を適切に遂行できるかの判断材料として、セキュリティ対策の状況も評価されることになる。
12. 知的財産権の報告義務(第5回で追加)
補助事業に係る発明、考案等について知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権等)を出願・取得・譲渡・実施権設定した場合、補助事業終了後5年間、その取得状況を報告する義務が新たに設けられた。
13. 提出書類の変更
第5回で追加された書類
- 【指定様式】1人当たり給与支給総額の確認書(必須)
- 【指定様式】事業計画書(関税影響を受けている申請者用)
- サプライチェーンを俯瞰する企業との取引実績がわかる書類
- サプライチェーンの省力化に寄与することを証する書類
第4回のみの書類
- 賃上げ加点用の確認書(加点廃止に伴い不要に)
まとめ
第5回公募の主な変更点を整理すると、以下のようになる。
- 賃金要件の一本化:1人当たり給与支給総額+3.5%に統一
- 補助率の簡素化:金額による区分を廃止
- 関税対策への配慮:米国追加関税の影響を受ける事業者への支援を新設
- 審査の厳格化:口頭審査時間の延長、サイバーセキュリティ対策の評価追加
- 対象外事業・経費の明確化:販売目的の開発等を明確に除外
- 従業員要件の明文化:従業員0名の事業者は申請不可
申請を検討している事業者は、これらの変更点を踏まえて事業計画を策定していただきたい。特に賃金要件の変更は大きいため、自社の給与計画との整合性を十分に確認することが重要である。
※本記事は2025年12月時点の公募要領に基づいて作成しています。最新情報は必ず公式サイトでご確認ください。


