自民党の参院選公約における中小企業向け政策 – 経済成長と賃上げ重視の戦略

はじめに

2025年夏の参議院選挙において、自民党は「日本を動かす 暮らしを豊かに」と題された選挙公約を発表した。
この公約では、「責任政党3つのビジョン」として「強い経済」「豊かな暮らし」「揺るぎない日本」を掲げ、野党各党の消費減税路線に対抗し、経済成長による所得向上を重視する姿勢を鮮明にしている。
本記事では、自民党の参院選公約における中小企業向け政策を簡潔に紹介し、その影響と意義を解説する。

経済成長の数値目標

自民党は以下の野心的な目標を設定している。

長期目標（2040年）

• 名目国内総生産（ＧＤＰ）を2040年に1000兆円とし、平均所得を現在から５割以上増加させる

中期目標（2030年度）

• 物価高を上回る賃上げの実現に向け2030年度に賃金を100万円程度増やす目標

これらの目標は、中小企業の生産性向上と賃上げ能力の強化も前提としており、中小企業政策の重要性を示している。

中小企業向け主要政策

1. 賃上げ・生産性向上支援

自民党は「減税より賃上げ」の方針を明確にし、中小企業の賃上げ能力向上を支援する。設備投資促進税制、デジタル化推進支援、人材育成支援制度などの充実を図る。

2. デジタル化・地方創生支援

DX推進支援制度の拡充、IT導入補助金の活用促進を行う。地域特産品のブランド化支援、観光産業との連携促進、農商工連携の推進により地方創生を図る。

3. 省力化・自動化推進支援

人手不足解消と生産性向上のため、省力化投資補助金の継続・拡充を図る。AI・ロボット導入支援、自動化設備への投資促進により、中小企業の省力化を推進する。

4. 金融・事業承継支援

政府系金融機関による資金供給、信用保証制度の拡充、事業承継支援の強化を実施する。クラウドファンディング活用支援やベンチャーキャピタルとの連携促進により、新たな資金調達手段を提供する。

対米関税措置への対応策

米国の追加関税措置への対応策も盛り込まれている。国内産業と雇用を守るため十分な予備費を確保し、中小企業への影響が顕在化した場合に、躊躇なく追加対策を講じると明記している。

具体的対応策

• 影響を受ける中小企業への緊急支援
• 新市場開拓支援の強化
• 国内回帰促進策の実施
• サプライチェーン強靭化支援

他党との政策比較

消費税政策における違い

自民党の方針

• 消費税率の維持
• 経済成長による実質的負担軽減

野党の方針 多くの野党が消費税減税・廃止を掲げる中、自民党は成長戦略による解決を重視している。中小企業にとっては、税制の安定性と成長支援策のバランスが重要な判断材料となる。

中小企業への影響分析

プラス要因

1. 競争力強化支援

• DX推進などによる生産性向上
• 人材育成・確保支援
• 技術力向上支援

2. 経営環境改善

• 金融支援の充実
• 規制緩和の推進
• 事業承継支援の強化

留意すべき課題

1. 政策実効性の確保

• 賃上げ目標達成への道筋
• 地方と都市部の格差是正

2. 財源確保の持続性

• 長期的な財政健全性
• 税制改革の必要性

3. 競争環境の変化

• 対米関税措置の長期化リスク
• 国際競争激化への対応
• 技術革新への適応

政策実現に向けた課題

1. 財源確保の課題

大規模な経済政策の実施には、安定した財源確保が不可欠である。国の税収実績を見ながら政策規模を調整する必要がある。

2. 民間部門との協働

中小企業政策の実効性を高めるためには、金融機関、商工会議所、業界団体などとの連携が不可欠である。官民一体となった推進体制の構築が重要である。

自民党公約が推進される前提として中小企業が取るべき方向性

1. 生産性向上への取り組み強化

自民党の賃上げ目標達成には、中小企業の生産性向上が前提となる。設備投資に係る補助金、促進税制やDX推進支援を活用するため、デジタル化計画の策定と人材育成体制の整備が必要である。

2. 省力化・自動化への投資準備

人手不足解消と賃上げ能力向上のため、省力化投資補助金等を活用した自動化設備導入の検討を進める必要がある。投資計画の策定と資金調達方法の検討が重要である。

3. 持続的な成長戦略の構築

GDP1000兆円という大きな経済成長目標の実現には、中小企業の継続的な事業拡大が不可欠である。新市場開拓、技術革新への投資、持続可能な経営モデルの構築により、成長エンジンとしての役割を果たす必要がある。

まとめ

自民党の参院選公約における中小企業政策は、経済成長を通じた課題解決を重視する包括的なアプローチである。賃上げ支援、デジタル化推進、地方創生など、多面的な支援策を提示している。

特に注目すべきは、GDP1千兆円実現と国民所得5割増という野心的な目標設定である。これは中小企業の生産性向上と競争力強化を前提としており、中小企業にとって大きなビジネスチャンスとなる可能性がある。

ただし、政策の実現には財源確保、実施体制の整備、民間部門との連携など、多くの課題がある。中小企業経営者は、政策動向を注視しながら、自社の競争力強化と成長戦略の構築に取り組むことが重要である。

自民党の掲げる「強い経済」の実現には、中小企業の活躍が不可欠であり、政策支援を最大限活用した積極的な取り組みが求められている。