ものづくり補助金の傾向④従業員数の多い企業のハードルは上がった
令和元年度補正予算事業・令和2年度補正予算事業の3次締切の採択発表とともに、
ものづくり補助金総合サイトに「データポータル」が公表されています。
そのデータで、これまでの申請及び採択状況のデータがまとめられています。
このデータから考察できることを
いくつかに分けてご紹介します。
今回はものづくり補助金に関して
今年の制度変更の影響により「従業員数の多い企業の応募や採択のハードルは上がった」と感じていますが
そのことについてご紹介していきます。
まず、ここでいう従業員数の多い企業とは、経産省の定義では「中小企業」のことを指します。
簡単にいうと当補助金やほかの経産省系の制度でも下記のように従業員数ごとに定義づけがされています。
製造業など⇒従業員数20名以下は「小規模事業者」、21名以上は「中小企業」
サービス業など⇒従業員数5名以下は「小規模事業者」、6名以上は「中小企業」
以下、この定義でご説明していきます。
ものづくり補助金は、従業員数の多い企業(中小企業)は申し込みににくなった?
まず、ハードルが上がる、ということの1点目として、
従業員数の多い企業(中小企業)はそもそも申し込みにくくなった、と思われます。
いわゆる、小規模事業者でない中小企業は申し込みにくくなったと感じていますが、その理由として次の2点があります。
理由①中小企業は賃上げ要件を満たすのが大変
理由②中小企業は補助率が優遇されにくい
それぞれ下記にてご説明していきます。
理由①中小企業は賃上げ要件を満たすのが大変
今年から賃上げ要件として、
応募にあたって
給与支給総額と最低賃金の条件をクリアする必要があります。
これをクリアするのが企業規模が大きくなればなるほど
クリアするのが難しくなる傾向にあるので
そもそも申し込みにくくなっている、という意見を中小企業からよく聞きます。
たとえば、給与支給総額を増加させていく要件に関しては企業規模が大きくなればなるほど
その額が大きくなり、企業にとっての負担が増えます。
また、最低賃金の水準を底上げする要件に関しても、規模が大きくなるほど
諸事情により最低賃金近くで働く従業員の方が多くおられるため、
これを上げることも企業にとっては負担が増えます。
こういったことから従業員数の多い中小企業はこの賃上げ要件を満たすのが大変で
申し込みにくくなっている、と感じています。
理由②中小企業は補助率が優遇されにくい
中小企業は基本的な補助率が1/2です。
小規模事業者が2/3であるのと比べると補助率の面でも優遇されていません。
(特別枠で採択されると補助率は嵩上げされます。)
この補助率1/2ということからも中小企業が申し込むにあたってのモチベーションは若干さがっていると感じています。
データから見てもハードルが上がっている
データポータルサイトには、
下記のように申請者の規模(従業員数)と
応募数や採択率の関係が表示されています。
上記のデータからは、
従業員数が21名を超えると採択率が徐々に落ちていく、
従業員数が21名を超えると応募者数が減っていく、
の2つの傾向が主に読み取れます。
「従業員数が21名を超えると採択率が徐々に落ちていく」に関しては、
加点がとりくにいのでこういった傾向が出ていると思います。
加点に関しては、中小企業は
小規模事業者の加点が取れない、
賃上げに関する加点が取りにくい、
傾向にあります。
こういった点から、中小企業は採択率に関して不利になっていると感じます。
「従業員数が21名を超えると応募者数が減っていく」に関しては、
そもそも20名以下の規模の企業のほうが母数として多いことに加え、
21名以上になると補助率が低かったり加点が取りにくく採択されにくいので
こういった傾向になっていると思います。
以上のように、今年のものづくり補助金の傾向として
従業員数の多い企業のハードルは上がっていると感じています。
逆を言えば、規模の比較的小さい
「小規模事業者」は相対的に優遇されているので前向きに応募を検討されても良いかと思います。