中小企業成長加速化補助金の拡充!「100億企業」を目指す中小企業への支援を徹底解説

令和7年度補正予算案において、中小企業の飛躍的成長を支援する「中小企業成長加速化補助金」の拡充が盛り込まれた。売上高100億円を超える企業の創出を目指すこの補助金は、最大5億円の補助を受けられる大型の支援制度である。本稿では、制度の概要から申請のポイントまで詳しく解説する。
中小企業成長加速化補助金とは
中小企業成長加速化補助金は、2024年度(令和6年度)補正予算で創設された新しい補助金制度である。売上高100億円超を目指す中小企業の大胆な設備投資を支援することを目的としている。
制度創設の背景
日本経済は賃上げ率・国内投資ともに30年ぶりの高水準にあるが、多くの中小企業は物価高や人手不足などの経営課題に直面している。経済の好循環を全国に行き渡らせるためには、中小企業全体の「稼ぐ力」を底上げするとともに、地域にインパクトのある成長企業を創出していくことが重要である。
売上高100億円に及ぶ企業は、一般的に賃金水準が高く、輸出による外需獲得やサプライチェーンへの波及効果も大きいなど、地域経済に与えるインパクトも大きいものとなる。こうした観点から、将来の売上高100億円を目指して大胆な投資を進めようとする中小企業者の取組を支援することが本補助金の目的である。
令和7年度補正予算での拡充内容
令和7年度補正予算案では、中小企業成長加速化補助金の拡充が盛り込まれている。
予算規模
- 生産性革命推進事業全体:3,400億円(この内数に中小企業成長加速化補助金)
- 大規模成長投資支援:4,121億円(新規2,000億円、既存2,121億円)
- うち1,000億円程度を「100億宣言企業」向けに確保
中堅・中小企業が賃上げに向けた省力化等による労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るための大規模な投資に対する支援が継続される。
補助金の概要
基本スキーム
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象者 | 売上高100億円を目指す中小企業 |
| 補助上限額 | 5億円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 補助事業実施期間 | 交付決定日から24か月以内 |
申請要件
中小企業成長加速化補助金を受け取るためには、以下の5つの要件を満たす必要がある。
- 中小企業等経営強化法で定める中小企業者であること
- 売上高10億円以上100億円未満であること
- 投資額1億円以上(税抜、外注費・専門家経費を除く補助対象経費分)であること
- 売上高100億円を目指す「100億宣言」を行い、公表していること
- 一定の賃上げ要件等を満たす今後5年程度の事業計画書を策定し、実行すること
補助対象経費
- 建物費
- 機械装置費
- ソフトウェア費
- 外注費
- 専門家経費
「100億宣言」とは
「100億宣言」とは、中小企業が自ら「売上高100億円を超える企業になること」および「それに向けたビジョンや取組」を宣言し、専用ポータルサイト上に公表するものである。
宣言で記載すべき内容
- 企業基本情報(企業名、代表者名、所在地等)
- 現在の売上高
- 100億円達成に向けたビジョン
- 具体的な措置・取組内容
- 設備投資による生産体制の増強
- 海外展開
- 新事業・新分野進出
- M&Aによる成長
- 社内体制の刷新 など
- 目標達成までのロードマップ
宣言のメリット
100億宣言を行った企業には、以下のメリットがある。
- 中小企業成長加速化補助金への申請資格取得
- 100億企業向け経営者ネットワークへの参加
- 公式ロゴマークの使用(名刺等でのPRに活用可能)
第1次公募の実績
2025年5月8日から6月9日まで実施された第1次公募の結果は以下のとおりである。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 申請件数 | 1,270件 |
| 採択件数 | 207件 |
| 採択率 | 約16.3% |
採択率は約16%と厳しい水準であり、事業計画の完成度が採択の鍵を握ることがわかる。
審査のポイント
審査では、以下の観点から計画の効果・実現可能性等が定量的・定性的に評価される。
経営力
- 経営者のビジョンやシナリオが明確であるか
- 経営戦略上の補助事業の位置づけを踏まえて、飛躍的な成長につながることが見込まれるか
- 外部・内部環境の認識(市場や顧客動向、自社の強み・弱み、経営資源等の状況等)を踏まえた事業戦略となっているか
評価指標例:売上高成長率、付加価値増加率、売上高投資比率等
波及効果
- 産業競争力の強化
- イノベーションの創出
- 地域資源の活用
- サプライチェーンへの効果
税制優遇との併用
中小企業成長加速化補助金の対象企業には、建物費に関する税制優遇措置が適用される可能性がある。
中小企業経営強化税制(B類型の拡充)
2025年度(令和7年度)税制改正により、建物の新設・増設費についても特別償却(最大25%)または税額控除(最大2%)が認められる予定である。
補助金と税制優遇を組み合わせることで、企業の成長投資の負担を大幅に軽減できる可能性がある。
申請準備のポイント
今から始めるべき準備
- GビズIDプライムアカウントの取得
- 申請に必須。郵送の場合は最大2週間かかるため早めの対応が必要
- 100億宣言の準備
- ビジョンとロードマップの策定
- 具体的な措置・取組内容の検討
- 事業計画書の骨子作成
- 5年程度の成長計画
- 賃上げ計画
- 投資計画の詳細
- 過去の採択事例の研究
- ものづくり補助金や大規模成長投資補助金の採択事例が参考になる
- 専門家との連携
- 認定経営革新等支援機関への相談を検討
まとめ
中小企業成長加速化補助金は、最大5億円という大型の補助が受けられる成長志向の中小企業にとって非常に魅力的な制度である。ただし、採択率は約16%と厳しい水準であり、入念な準備と質の高い事業計画書の作成が不可欠である。
令和7年度補正予算案では、さらなる拡充が予定されており、100億企業を目指す中小企業にとって大きなチャンスとなる。公募開始に向けて、今から計画的に準備を進めることをお勧めする。
参考情報
- 中小企業庁「令和7年度補正予算案(中小企業・小規模事業者等関連予算)」
- 中小企業庁「中小企業成長加速化補助金」公募要領
- 100億企業成長ポータル
- 中小企業庁「100億宣言」開始のお知らせ

