【後編】補助金統合で何が変わる?経営コンサルタントが解説する「新事業進出・ものづくり補助金」と今すぐ取るべきアクション

はじめに
前編では、ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合され「新事業進出・ものづくり補助金」として2026年度以降に生まれ変わる背景と、新制度の概要について解説した。
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r8/shinjigy_mono.pdf

後編となる本記事では、この統合が経営にとって何を意味するのかという考察と、中小企業が今すぐ取るべき具体的なアクションを経営コンサルタントの視点から提示する。
1. 経営コンサルタントが見る「統合の意味」
中小企業に求められる「攻めの経営」への転換
今回の統合は、単なる制度の整理統合ではない。国が中小企業に対して「守りの生産性向上だけでなく、新市場・海外市場へ積極的に挑戦せよ」と強いメッセージを発していると解釈すべきである。
補助金の活用を「設備の更新コストを抑える手段」としか考えていない企業にとっては、申請要件が厳しくなる可能性がある。一方で、本気で新事業・海外展開に挑戦しようとしている企業には、より手厚い支援が得られる制度設計になっていくと見るべきであろう。
従来(数年前)のものづくり補助金は「既存事業の延長線上にある革新的な設備投資」であっても比較的申請しやすい枠組みであった。しかし新制度は「新市場・高付加価値事業への進出」や「海外展開」が主軸となる。これは経営戦略の方向性そのものが問われる制度への転換を意味する。
事業計画書の「質」がさらに問われる時代へ
ものづくり補助金でも一定規模以上の申請には口頭審査が導入されており、経営者自らが事業計画の内容を語れることが求められてきた。新制度においても、「なぜ新事業に進出するのか」「なぜ海外市場を狙うのか」という戦略的な根拠を、説得力をもって示せる事業計画書の作成が不可欠である。
採択されるための事業計画書に求められる要素として、自社の強みと市場機会の整合性の明確化、既存事業との差別化と相乗効果の説明、実現可能性を裏付ける具体的な数値・根拠、そして3〜5年の収益見通しと波及効果の提示が挙げられる。「補助金をもらうための計画書」ではなく、「経営の羅針盤となる計画書」を作ることが採択への近道である。
2. 今すぐ取るべき4つのアクション
① 現行制度での申請を急ぐ
現在の要件にマッチする事業計画がある場合、新制度に切り替わる前の現行のものづくり補助金・新事業進出補助金に申請することを強く推奨する。
現在、ものづくり補助金は23次公募、新事業進出補助金は第3回公募(令和8年3月26日締切)がそれぞれ進行中である。申請機会はあと1回ずつ程度と見込まれており、時間的な余裕はない。新制度の要件が現行制度より厳しくなる可能性もあるため、確実に申請できる今のうちに動くべきである。
② 新制度を見据えた中長期計画の策定
新事業進出・ものづくり補助金は「新市場・海外展開」に軸足を置いた制度である。自社の強みを棚卸しし、進出できる新市場・新事業を今から検討し、3〜5年の事業計画として具体化しておくことが採択の近道となる。
特に以下の問いに対して明確な答えを持てるかどうかが重要な準備となる。自社が持つ技術・ノウハウで新たに狙える市場はどこか、既存事業とは「明確に異なる」と言える新事業の定義はできているか、海外展開を検討するのであれば対象国・販路・パートナーの見当がついているか——これらを経営者・幹部で議論しておくことが、申請準備の質を大きく左右する。
③ 認定経営革新等支援機関との早期連携
補助金申請においては、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認書が必要となる場合がある。質の高い事業計画書の作成には専門家の支援が不可欠であり、公募開始後に慌てて連携しても間に合わないケースも多い。採択率を高めるためにも、早期に支援機関と連携し、計画策定段階から関与してもらうことを推奨する。
④ 最新情報の継続ウォッチ
2026年2月時点では、新補助金の公募開始時期や要件の詳細は未公表である。公募開始時期や要件の詳細が明らかになり次第、速やかに対応できるよう、中小企業庁の公式サイトや認定支援機関からの情報を継続的にウォッチしておくことが重要である。
まとめ
「新事業進出・ものづくり補助金」への統合は、中小企業に「守り」から「攻め」への経営転換を促す国の強いメッセージである。単なる設備投資補助の枠を超え、新市場・海外展開を本気で目指す企業を支援する制度へと進化する。
この変化をチャンスと捉え、現行制度の申請機会を逃さないこと、そして新制度を見据えた戦略的な事業計画の策定を今すぐ始めることが、補助金を最大限に活用するための鍵である。
補助金はあくまで経営戦略の実行を後押しするツールである。「補助金ありき」ではなく、「自社の成長戦略に補助金を活用する」という姿勢で臨むことが、採択後の事業成功にもつながると考える。
本記事は2026年2月時点の公開情報をもとに作成している。制度の詳細については、中小企業庁の公式発表を必ずご確認いただきたい。


