はじめに

2025年11月21日に発表された総合経済対策には、米国関税の影響を受ける中小企業への緊急支援策が盛り込まれている。本ブログでは、関税対応支援を中心に重要施策を解説する。
（現時点ではこの内容は補正予算までは落とし込まれていなので、詳細は、後日発表される補正予算等で確認いただきたい。）

1. 米国関税への対応支援

日米間の関税合意に基づく投資イニシアティブの履行に向け、政府は中小企業への支援を重点的に強化する。

資金繰り支援の対象企業

• 米国関税の影響を受ける輸出関連中小企業
• 米国向け製品を製造する部品サプライヤー
• 関税の影響で取引先が打撃を受けている企業

支援内容: 運転資金の融資条件優遇、返済猶予、信用保証制度の拡充

設備投資への優遇措置

• 補助金における優先採択
• 補助率の引上げ

この機会に抜本的な事業構造の見直しと設備投資を行い、強靱な経営基盤を構築することが重要である。

2. 物価高・エネルギーコスト対応

重点支援地方交付金: 自治体が実施する事業者向け支援プログラムを活用することで、コスト増加への対応が可能となる。

エネルギーコスト支援

• 電気・ガス代支援（1～3月使用分）
• ガソリン補助金引上げ（2025年12月11日までに暫定税率廃止と同等水準へ）

3. 成長分野における事業機会

地域基幹産業への支援: 医療・介護、地域交通・物流、小売・サービス、観光で事業を営む中小企業は、設備投資支援や人材確保支援の恩恵を受けられる見込みである。

経済安全保障関連の戦略分野: AI・半導体、造船、量子、フュージョン、創薬・バイオ、航空・宇宙。これらの分野に関連する中小企業はサプライチェーン強化の支援対象となる可能性がある。

食料安全保障: 5年間の農業構造転換集中対策により、農業機械メーカー、資材メーカー、加工業者にビジネスチャンスが生まれる。2030年輸出額5兆円目標に向けた支援も拡充される。

防災・国土強靱化: 建設業、設備工事業、防災関連製品製造業の中小企業にとって、安定的な受注機会が見込まれる。

4. 活用に向けた準備

自社影響分析のポイント

1. 米国関税の直接的・間接的影響の有無
2. 物価高・エネルギーコスト上昇の影響度
3. 戦略分野・サプライチェーンとの関連性

情報収集先: 中小企業庁ウェブサイト、地方自治体、商工会議所・商工会、よろず支援拠点

5. まとめ

重要ポイント

• 米国関税の影響を受ける企業には資金繰り支援と設備投資の優遇措置
• 物価高・エネルギーコスト対策の継続と拡充
• 戦略分野・サプライチェーン強靱化への投資機会

これらの施策は、短期的な経営安定化と中長期的な競争力強化の両面を支援する内容となっている。

中小企業にとって重要なのは、これらの支援策を「もらえる補助金」ではなく「経営変革の契機」として活用することである。経済安全保障や食料安全保障といった国家戦略関連分野では、今後、中長期にわたり継続的な投資が見込まれる。中長期的な事業機会の獲得という観点から検討すべきである。