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【新ものづくり補助金解説③】新事業進出枠 — 「2つの新規性」を両方満たせるか

※本記事は2026年9月1日時点で公開されている情報に基づいて作成している。制度内容および提出書類は今後改訂される場合があるため、申請にあたっては必ず補助金公式ホームページおよび最新版の公募要領・応募申請ガイドをご確認いただきたい。

前回は革新的新製品・サービス枠を扱った。今回は補助上限額が最大7,000万円(賃上げ特例適用で9,000万円)となる新事業進出枠である。金額が大きいだけに定義も厳格で、2つの条件を両方満たす必要がある。

製品と市場、両方に新規性が要る

新事業進出枠の定義は次の2つである。

①製品等の新規性——製造する製品、提供する商品・サービス等が新規性を有すること。 ②市場の新規性——その製品・サービスが属する市場が、既存事業では対象としていなかったニーズや属性(法人/個人、業種、行動特性等)を持つ顧客層を対象とする新たな市場であること。

この2つは「AND条件」である。片方だけでは足りない。

安心してよい点もある。ここでいう新規性とは申請する中小企業等にとっての新規性であり、日本初・世界初といった世の中における新規性ではない。ただし時点の条件があり、申請予定回の公募開始日(=公募要領公開日)以降に初めて取り組んでいる事業でなければ新規性は認められない。

新事業進出枠の定義(製品等の新規性・市場の新規性)

出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金事務局「応募申請ガイド(第1回)1.0版」(2026年8月24日)p.8 より引用 https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/assets/documents/shinmono_submission_guide_01.pdf

「製品等の新規性」に該当しない5つのパターン

ガイドは非該当例を挙げている。要約すると、①既存製品の製造量・提供量を増やすだけ、②過去に製造していた製品を再び製造する、③製造方法を変えるだけ(手作業をデジタル化して機械製造に切り替える等)、④性能を定量的に計測できる場合に、従来品と有意な差が認められない、⑤公募開始日時点で既に販売・提供や売上が発生している、の5つである。

特に⑤には注意が必要である。新製品のテスト販売やEC先行販売を済ませてから申請する——という順序は、この枠では致命傷になる。着手のタイミングそのものが要件に組み込まれている。

「市場の新規性」の壁は、顧客層が変わるか

市場の新規性は、アイスクリーム店を例にした3つの非該当例で説明されている。

既存市場の一部だけを対象にする場合。 アイスクリームを提供している事業者がバニラに特化する。従来の顧客の一部が買うだけなら、新市場ではない。

単に商圏が異なる場合。 A駅前の店がB駅前でも同じアイスクリームを提供する。場所は変わるが、顧客層の属性は変わらない。

既存製品と市場が同一の場合。 アイスクリーム店が新たにかき氷を売る。従来の顧客がアイスの代わりにかき氷を買うだけなら、需要が代替されただけで市場は増えていない。

市場の新規性の非該当例

出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金事務局「応募申請ガイド(第1回)1.0版」(2026年8月24日)p.10 より引用 https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/assets/documents/shinmono_submission_guide_01.pdf

判定の急所は「誰が買うのか」

3つの非該当例に共通するのは、買い手が入れ替わっていないという一点である。売る物が変わっても、売る場所が変わっても、買っているのが従来と同じ顧客層なら市場の新規性は認められない。

したがって事業計画では、製品の説明よりもむしろ「既存事業では誰に売っていて、新規事業では誰に売るのか」の対比を明確に示す必要がある。法人か個人か、どの業種か、どんな行動特性を持つ層か。ここが曖昧なままでは、どれほど設備投資の中身が立派でも枠の定義を満たさない。

なお、この2つの新規性を満たすことは入口の条件にすぎない。審査ではさらに「新市場性」または「高付加価値性」が問われる。定義と審査は別物であり、この関係については審査項目を扱う回で改めて整理する。


次回予告|第4回はグローバル枠を扱う。ここでも定義は2つあり、「自発的な海外販路開拓」と「海外市場の新規性」が問われる。商社任せの輸出や取引先からの発注に基づく増産が認められない理由を読み解く。

出典・注記

  • 本記事の図表および記載内容は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金事務局「応募申請ガイド(第1回)1.0版」(2026年8月24日公表)に基づく。
  • ガイド原本:応募申請ガイド(第1回)PDF
  • 補助金公式サイト:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金
  • 掲載画像は上記ガイドから引用したものであり、著作権は同事務局に帰属する。図中の一部を拡大・トリミングして掲載している場合がある。
  • 本記事は制度の概要を解説するものであり、採択を保証するものではない。
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